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文字によるインスタレーション

王超鷹 おう ちょうよう


1958年上海生まれ。絵画、切り絵、篆刻、書道、詩作、グラフィックデザインなど、「コミュニケーション」をキーワードに表現を行う。コンセプトの強い作品は、芸術分野のみならず、企業のCIデザインにも生かされている。講演依頼も多い、異質の芸術家。現在、中国美術学院国際交流委員、上海工程技術大学客員教授 、武蔵野美術大学特別講師。日本、中国に於いて出版書籍多数。

 


 王超鷹の芸術表現の多くは象形文字をモチーフとし、中国雲南省の少数民族ナシ族に伝わるトンパ文字文化の保存、古代中国の宮廷文字「雅体」の復元と現代への応用など、多岐に渡ります。象形文字のなりたちは自然と人間との距離を明確に示す概念であり、言語の壁を越えてコミュニケーションを可能にするツールとなり得るからです。

 ここに展示された文字の壁は、彼がこの展覧会のために制作した初の現代美術作品です。彼はこの作品において文字の解放に取り組み、私たちの既成概念、さらには歴史の解放を試みています。

 文字は人類の偉大な発明であり、人々が概念を共有できるという社会的利益をもたらしました。二千年前に秦の始皇帝がそうしたように、文字を統制するということは、概念を支配し、世界を支配するという考え方に基づいています。王超鷹自身もその運命を大きく左右されることとなった文化大革命において、文字の読めない農民たちを含めたすべての中国人を支配し、今もなお様々な姿で人々の心に刻まれている圧倒的な概念と強烈なイメージ。それを示した最も象徴的な書物。彼はその頁に、中国を代表する四百の名字と指導者の名字を、始皇帝が初めて統制した漢字の書体で刻みました。異なる文字体系を持つ文化圏で発表することにより、この文字の壁は様々な印象と解釈を得ることでしょう。この作品を通して彼は、中国社会の現在位置を、自国を含め世界に今問いかけているのです。

 土器の文様、岩や木片への彫刻、そして身体と精神への刺青。「刻」という漢字が、最も古い家畜の一種である「いのしし」と所有者の文様を刻む「刀」から構成されているように、何かを刻み後世に意志を伝え遺すことは人間の最も本能的な行為です。王超鷹は、見いだすべき価値は過去からあり、自然の中にあり、それぞれの遺伝子の中にあるということを、様々な表現手法で提示し続けています。異なる価値観を統一するのではなく、その違いを認め合う架け橋を作るために、彼は想いを刻み、人間が本来持ち得ているはずの心に訴え続けているのです。


cutout Chinese bible on wood
3mx10m
photo (C) Wang Chaoying/ JIBO